






中小企業向け賃上げ促進税制の概要
1.中小企業向け賃上げ促進税制の概要
中小企業向け賃上げ促進税制は、政府が中小企業の賃金引き上げを促進するために設けた税制で、給与支給額が前年度より増加した場合に、その増加額を法人税や所得税から控除できる制度です。この制度は、従業員数が1,000人以下の中小企業や青色申告書を提出する個人事業主が対象であり、賃上げの実施を通じて働く人々の生活の向上を目指しています。本記事では、この賃上げ促進税制の概要や具体的な要件、メリットについてわかりやすく解説し、皆様が制度を最大限に活用できるようサポートいたします。
1-1.具体的な要件とメリット
中小企業向け賃上げ促進税制は、中小企業者や青色申告書を提出する常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主が対象で、前年度より給与等支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。具体的には、賃上げ要件を満たすと、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%または30%が税額控除され、税額控除額の上限は法人税額または所得税額の20%となります。さらに、教育訓練費や子育て支援に関する上乗せ要件を満たすことで、税額控除率が10%または5%上乗せされるメリットがあります。この制度は、特に賃金の引き上げを考えている企業や、従業員の育成・支援に力を入れたい企業にとって、税制上の大きな助けとなります。
1-2.税額控除によりコスト削減が可能
中小企業向け賃上げ促進税制では、給与等支給額を前年度と比較して増加させた場合、その増加額の一部を法人税や所得税から控除できるため、実質的なコストを削減することができます。具体的には、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%または30%を税額控除として受けることができ、これにより企業の負担が軽減され、資金の使い道を他の重要な分野にシフトできる可能性があります。
1-3.従業員のモチベーション向上
賃上げ促進税制を活用することで、企業は従業員に対して安定した給与の支給を実現することができます。給与が増加することで、従業員の生活が向上し、働く意欲が高まります。従業員が安心して働ける環境を作ることで、離職率の低下や業務効率の向上が期待でき、企業の成長に寄与するでしょう。
1-4.教育訓練費の増加に伴うスキル向上
この制度では、上乗せ要件として教育訓練費を前年度と比べて5%以上増加させることが求められます。企業が教育訓練に投資することにより、従業員の専門知識やスキルが向上し、業務の生産性が高まることが期待されます。教育訓練費の増加に対しては、税額控除率が10%上乗せされるため、企業にとっても大きなメリットとなります。
1-5.女性活躍支援・子育て支援の促進
上乗せ要件として、子育てとの両立支援や女性の活躍推進を実現するための認定を取得することで、さらに税額控除を受けることができます。これにより、企業は多様性を尊重し、働きやすい職場環境を整えることができ、結果として企業の良好なイメージ向上にもつながります。
1-6.繰越控除措置による柔軟性
賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額は、翌年度以降に最大5年間繰り越すことが可能です。これにより、企業は経営状況に応じて税額控除を柔軟に活用できるため、計画的な財務運営が実現し、長期的な成長戦略を描く際にも有用です。
2.制度の注意点とリスク
2-1.税額控除の上限
中小企業向け賃上げ促進税制では、税額控除の上限が法人税額または所得税額の20%となっています。このため、賃上げを実施しても、想定以上の控除額を受けられない可能性があります。特に、賃上げを大幅に行った場合でも、税額控除の上限に達することがあるため、事前にシミュレーションを行っておくことをお勧めします。
2-2.適用要件の厳格さ
制度の適用には、賃上げ要件や教育訓練費の増加要件を満たす必要があります。特に、賃上げ要件は前年度と比較して1.5%以上、または2.5%以上の増加が求められます。これらの条件を満たさない場合、税額控除を受けることができないため、事業計画を立てる際には、計画的に賃上げを実施することが重要です。
2-3.認定取得のタイミング
上乗せ要件として、くるみん認定やえるぼし認定を取得することが求められていますが、認定のタイミングによっては適用を受けられない場合があります。特に、過去に取得した認定をもって上乗せ要件を満たすことはできませんので、認定の申請は計画的に行うようにしましょう。
2-4.繰越控除の複雑さ
繰越控除を適用するためには、未控除額が発生した事業年度以後の確定申告書への明細書の添付が必要です。この手続きが欠けていると、繰越控除が無効となるため、注意が必要です。また、繰越控除を受ける年度には青色申告を行う必要がありますので、事前に確認しておくことが肝要です。
2-5.教育訓練費の範囲
上乗せ要件の一つとして教育訓練費の増加が求められていますが、対象となる費用の範囲は明確に定められています。例えば、教育訓練中の人件費や旅費、福利厚生目的の費用は対象外です。これにより、実際にどの費用が認められるか確認するためには、事前に内容をしっかりと把握しておく必要があります。
この制度を活用する際は、以上の注意点をしっかりと理解し、計画的に進めることが成功の鍵となります。税制を利用することで、企業の成長につながるよう、適切な準備を行いましょう。
3.申請の流れ
中小企業向け賃上げ促進税制を利用するための申請手続きは以下のステップに従って行います。初めての方でも迷わず進めるよう、わかりやすく段階ごとに説明します。
3-1.利用の準備
・制度の対象確認
まず、自社が中小企業者等に該当するかどうかを確認します。常時使用する従業員数が1,000人以下であることが条件です。
・賃上げ実施の確認
前年度と比べて給与等支給額が増加していることを確認します。増加率に応じて、適用される税額控除率が異なります(1.5%以上または2.5%以上の増加が必要です)。
3-2.必要書類の準備
・雇用者給与等支給額の明細
適用事業年度の雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額の計算書を作成します。
・教育訓練費の明細(上乗せ要件を利用する場合)
教育訓練費の額、実施内容、受講者名、支払証明書(領収書など)を整理します。
・認定証明書(上乗せ要件を利用する場合)
「くるみん認定」や「えるぼし認定」などの証明書を取得している場合は、そのコピーも必要です。
3-3.申請方法
・確定申告書の作成:
法人の場合は法人税の申告書、個人事業主の場合は所得税の申告書を作成します。申告書には、控除対象雇用者給与等支給増加額や控除を受ける金額、計算に関する明細書を添付します。
・提出先
申告書は所轄の税務署に提出します。電子申告も可能ですので、必要に応じて利用してください。
3-4.審査プロセス
・税務署による審査
提出された申告書は税務署によって審査されます。審査には通常、数週間から1ヶ月程度かかります。審査結果については、税務署から通知があります。
3-5.融資実行までの期間
・税額控除の実行
審査が通過すると、税額控除が適用されます。税額控除は次の事業年度の法人税または所得税から控除されます。具体的な控除の時期は、申告書の提出時期や税務署の処理状況によります。
3-6.繰越控除の利用(必要に応じて)
・未控除額の繰越
控除しきれなかった金額は、翌年度以降に5年間繰り越すことが可能です。その場合、適用年度以降の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書及び繰越控除を受ける金額を記載し、提出する必要があります。
これらのステップに従って申請を行うことで、中小企業向け賃上げ促進税制をスムーズに利用できます。分からない点があれば、近くの税務署や中小企業庁に相談することをお勧めします。
4.必要書類
中小企業向け賃上げ促進税制の適用を受けるためには、以下の書類や情報を申請時に準備する必要があります。
4-1.確定申告書
法人税の確定申告書(個人事業主の場合は所得税の確定申告書)
4-2.控除対象雇用者給与等支給増加額の明細書
控除対象となる雇用者給与等支給増加額の計算に関する明細書
4-3.適用額明細書
適用額に関する詳細を記載した明細書(法人のみ)
4-4.未控除額の明細書(繰越控除措置を利用する場合)
未控除額が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に添付する明細書
4-5.教育訓練費の明細書
教育訓練費の額に係る明細書
実施時期、内容、受講者、支払証明を記載した書類(提出は不要だが、保存が必要)
4-6.雇用者給与等支給額の計算に関する明細書
雇用者給与等支給額の計算に必要な情報を含む書類
4-7.くるみん認定、えるぼし認定の証明書(上乗せ要件を利用する場合)
認定を受けたことを証明する書類(適用事業年度中に取得したことが必要)
4-8.その他必要な証明書類
各種助成金の受給証明書など、関連する書類があれば添付
これらの書類を準備し、確定申告時に適切に提出することが、中小企業向け賃上げ促進税制を適用するための重要なステップです。必要書類の不備や不足があると、税制の適用が受けられない可能性があるため、十分に確認することが大切です。
5.まとめ
中小企業向け賃上げ促進税制は、企業が賃上げを実施する際に大きな支援となる制度です。賃上げによる従業員のモチベーション向上や、教育訓練への投資によるスキル向上が期待できる一方で、適用要件や注意点をしっかりと把握することが成功の鍵となります。この制度を活用することで、企業の成長を促進し、労働環境の改善にもつながります。ぜひ、計画的にこの制度を利用し、貴社の発展にお役立てください。
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